ガウディの建築

ガウディの建築 の詳細

1926年、不慮の事故であっけなくその生涯を終えてしまったアントニオ・ガウディ。然しながら、その73年間に及ぶ人生の中で、ガウディが成し遂げた偉業は計り知れないものがある。カサ・ビセンスからサグラダ・ファミリアに至るまで…彼が残した数多くの建築は、今でも私達を魅了し続け、未来永劫その名が廃れる事は無いであろう。そして今、その偉業の全てを余す事無く紹介しているのが本書であり、ガウディ建築を知る上では欠かせない、実に優れた解説書であった。本書は、ガウディの建築を年代を追いながら「第一期・歴史主義」「第二期・自然主義」「第三期・幾何学主義」として纏め上げ、更には最終章としてサグラダ・ファミリアを個別に取り上げている。また、処女作と言われるカサ・ビセンスのみならず、更に遡って大学時代の課題設計や助手時代にまで言及している点は実に興味深く、敢えてそれ等を紐解く事に依って、彼の建築の原点を詳らかにしてくれるのだ。尚、本書はあくまでも図説集なので、所謂「ガウディ伝」のような内容ではないのだが、その分、図版の豊富さは特筆に価するし、勿論、設計図の掲載もある。そして、解説は極めて簡略ではあるものの、その着想や構成を含めて非常に専門的に記述しており（だからと言って、決して難解ではない）、建築を学んでいる方達の期待にも充分に応えてくれる内容なのではなかろうか。尤も、残念ながら本書の図版は全て白黒なので、カラー写真で目を楽しませてくれるような華やかな著作ではないかもしれない。然しながら、より深くガウディの建築を分析している点は高く評価出来、単なるガイド・ブックとは一線を画する本格的な手引書だと思う。更にもう一つ付け加えるならば、巻頭にはバルセロナのガウディ建築の案内地図が、そして巻末にはガウディの年表があるのも非常に有用であった。本書を読むと、ガウディの建築の個性や魅力のみならず、技術面の詳細までもが理解出来る。単なる解説書の枠を超え、ガウディ建築の入門書として、更には専門書としても役立ってくれる貴重な一冊なので、ガウディ愛好家の方達には是非とも傍に置いて頂きたいと思う。